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叱るより、言い換える。人を育てる言葉の技術

  • sinsirokeibi
  • 2025年12月20日
  • 読了時間: 3分

人を育てる立場に立つと、「何を言うか」以上に「どう言うか」が重要だと感じる場面が多くあります。同じ事実を伝えていても、言葉の選び方ひとつで、相手の受け取り方は大きく変わります。特に教育や指導の場面では、言葉は相手を伸ばすこともあれば、簡単に気持ちを折ってしまう凶器にもなります。


指導がうまくいかない時、多くの場合は「内容」が間違っているのではなく、「言葉」が原因になっています。短所を短所のまま突きつけられた人は、防御的になり、成長よりも自己否定に意識が向いてしまいます。だからこそ大切なのが、短所を長所に言い換える視点です。


これは甘やかしではありません。事実から目を背けることでもありません。同じ現象を、相手が前を向ける言葉で伝えるという、教育の技術です。


まず大前提として意識したいのは、相手を否定しないことです。行動や結果に改善点があったとしても、「あなたはダメだ」というメッセージになってしまえば、その瞬間に教育は終わります。否定された人は、伸びる前に心が止まってしまいます。


次に大切なのが、相手の気持ちを折らないことです。指導の目的は、正しさを示すことではなく、成長してもらうことです。相手が「もうやりたくない」「どうせ自分は無理だ」と感じてしまえば、その時点で指導は失敗です。


では、具体的に「短所を長所に言い換える」とはどういうことか。以下に、現場でよくある例を四つ紹介します。


一つ目は、「動きが遅い」という評価です。そのまま伝えると、「要領が悪い」「仕事ができない」という烙印になりがちです。これを言い換えると、「一つひとつを丁寧に確認できる」「慎重でミスが少ない」という長所になります。その上で、「スピードが必要な場面では、ここだけ意識してみよう」と補足すれば、相手は前向きに改善点を受け取れます。


二つ目は、「自己主張が弱い」「意見を言わない」という短所です。これを否定的に伝えると、「消極的」「やる気がない」と誤解されます。しかし視点を変えれば、「周囲の話をよく聞ける」「協調性が高い」という強みです。「その良さを活かしつつ、ここでは一言だけ意見を出してみよう」と伝えることで、相手の価値を保ったまま成長を促せます。


三つ目は、「頑固」「融通が利かない」と言われがちなタイプです。この言葉は、相手のプライドを強く傷つけます。言い換えれば、「一度決めたことをやり抜く」「軸がぶれない」という長所です。「状況によって切り替える場面もある」と付け加えれば、否定ではなく調整の話になります。


四つ目は、「細かいことを気にしすぎる」という評価です。そのまま伝えると、「神経質」「面倒な人」という印象を与えます。しかしこれは、「リスクに気づける」「安全意識が高い」という大切な強みでもあります。「全体を見る役割と組み合わせると、もっと力を発揮できる」と伝えれば、本人の存在価値を高める言葉になります。


このように、短所と長所は表裏一体です。切り取り方次第で、人は「責められた」とも「認められた」とも感じます。


教育で本当に大切なのは、相手を気持ちよくすることです。気持ちよくなるというのは、甘い言葉をかけることではありません。「自分は見てもらえている」「活かしてもらえている」と感じられることです。

人は、否定されて伸びることはほとんどありません。でも、理解され、認められたと感じた時、人は自ら変わろうとします。言葉を変えるだけで、そのきっかけを作ることができます。


教育とは、正しさを押し付けることではなく、可能性を引き出すこと。そのための第一歩が、言葉の使い分けです。短所をどう言い換えるか。そこに、指導する側の力量が表れるのだと思います。

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