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【気象予報士が解説】冬の空気が乾燥するのはなぜ?太平洋側と日本海側の違いまでスッキリわかる!

  • sinsirokeibi
  • 10月26日
  • 読了時間: 7分

冬になると気になる肌や喉の乾燥。その主な原因は「気温の低さ」と「シベリアからの乾いた風」にあります。この記事を読めば、乾燥の仕組みから太平洋側と日本海側の湿度の違い、暖房で室内が乾燥する理由までスッキリわかります。


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1. 冬の空気が乾燥するのはなぜ?主な理由は2つ

冬になると肌がカサカサしたり、喉がイガイガしたりと、空気の乾燥が気になりますよね。冬の空気が乾燥するのには、主に2つの大きな理由が関係しています。ここでは、そのメカニズムを分かりやすく解説します。


1.1 理由1 気温が低いと空気中に存在できる水分量が減るから

空気は、スポンジのように水分(水蒸気)を抱え込むことができます。しかし、その抱え込める水分量には上限があり、この上限のことを「飽和水蒸気量」と呼びます。そして、この飽和水蒸気量は気温に大きく左右され、気温が低いほど小さくなるという性質があります。

つまり、気温がぐっと下がる冬は、空気そのものが含むことのできる水分量が夏に比べて格段に少なくなってしまうのです。下の表を見ると、気温が下がるにつれて飽和水蒸気量が大きく減っていくのがわかります。


気温と飽和水蒸気量の関係

気温

飽和水蒸気量(1立方メートルの空気中に存在できる水分量)

30℃

約30.4g

20℃

約17.3g

10℃

約9.4g

0℃

約4.8g

このように、冬は気温が低いために、もともと空気中に存在できる水分量が少ない状態です。これが、冬の空気が乾燥する根本的な理由の一つです。


1.2 理由2 冬特有のシベリアから吹く冷たく乾いた風

冬の天気図でよく耳にする「西高東低の冬型の気圧配置」。このとき、日本の天候に大きな影響を与えるのが、シベリア大陸で発生する冷たくて強力な「シベリア高気圧」です。

日本の冬は、このシベリア高気圧から吹き出す冷たい北西の季節風に覆われます。シベリアは広大な大陸であり、海のように水分を供給する源がありません。そのため、そこで生まれた空気はもともと水分をほとんど含んでおらず、非常に乾いています

この冷たく乾いた空気が日本列島に絶えず流れ込んでくるため、大気全体の乾燥が進むのです。気温の低さに加え、この乾いた風が冬の乾燥をさらに加速させる大きな要因となっています。


2. 【地域別】太平洋側と日本海側で乾燥の度合いが違うのはなぜ?

冬の天気予報で「太平洋側は乾燥して晴れ、日本海側は雪」というフレーズをよく耳にしませんか?同じ日本でも、冬の湿度は地域によって大きく異なります。その鍵を握っているのが、冬の季節風と日本の地形です。


2.1 日本海側は雪が降るため湿度が高い

冬に大陸から吹いてくるシベリア気団からの季節風は、もともとは非常に冷たく乾燥しています。しかし、この風が日本海を渡る際に、その性質を大きく変えるのです。対馬暖流の影響で比較的暖かい日本海の上空を通過するとき、海面から大量の水蒸気を補給し、湿った重い空気に変わります。

この湿った空気が、日本の背骨ともいえる奥羽山脈や越後山脈などの高い山脈にぶつかると、強制的に上昇させられます。空気が上昇すると上空で冷やされ、水蒸気が雲となり、やがて雪や雨となって地上に降ります。このため、冬の日本海側は曇りや雪の日が多く、湿度も比較的高く保たれる傾向にあります。


2.2 太平洋側は山を越えた乾いた風「からっ風」が吹く

一方、太平洋側では状況が全く異なります。日本海側で雪を降らせた後の空気は、山脈を越える際に水分を失い、非常に乾燥した状態になっています。

さらに、この乾いた空気が山の斜面を吹き下りる際に「フェーン現象」が発生します。空気は圧縮されることで温度が上昇し、もともと少なかった水分量は変わらないため、相対湿度がぐっと下がります。この、山を越えてきた乾燥した冷たい風が、関東地方で「上州のからっ風」などと呼ばれる「からっ風」の正体です。このため、太平洋側の冬は晴天の日が多く、空気はカラカラに乾燥するのです。



太平洋側と日本海側の冬の天候と湿度の違い

項目

日本海側

太平洋側

風の性質

日本海で水分を補給した湿った風

山を越えてきた乾いた風(からっ風)

主な天気

曇りや雪の日が多い

晴れの日が多い

湿度

高い

低い(乾燥)


3. 暖房をつけた室内が特に乾燥する理由

冬、暖房をつけた暖かい部屋に入ると、外気以上に空気が乾いていると感じませんか?喉がイガイガしたり、肌がカサついたりするのは、実際に暖房によって室内の湿度が大きく下がっているためです。そのメカニズムを詳しく解説します。


3.1 温度は上がるが水分量は変わらず「相対湿度」が低下する

空気の乾燥度合いを示す指標として、天気予報などでも一般的に使われるのが「相対湿度」です。これは、その温度の空気が含むことができる水分の最大量(飽和水蒸気量)に対して、実際にどのくらいの水分が含まれているかをパーセントで表したものです。

エアコンやストーブなどの暖房器具は、室内の空気を直接暖めます。しかし、加湿器などを併用しない限り、部屋を閉め切っていれば空気中に含まれる水分量そのもの(絶対湿度)は変わりません

空気は、温度が高いほどより多くの水分を含むことができる(飽和水蒸気量が大きくなる)という性質を持っています。そのため、水分量は同じでも、暖房によって温度が上昇すると、空気の水分を溜め込める器だけが大きくなり、結果として器に対する水分の割合(相対湿度)が大幅に低下してしまうのです。

具体的に、温度と湿度の関係を下の表で見てみましょう。





温度変化による相対湿度の変化(例)

状況

室温

空気中の水分量(絶対湿度)

飽和水蒸気量

相対湿度

暖房をつける前

10℃

5.0 g/m³

約9.4 g/m³

約53%

暖房をつけた後

22℃

5.0 g/m³

約19.4 g/m³

約26%

このように、外から取り込んだ冷たい空気を暖房で暖めるだけで、相対湿度は半分以下にまで下がってしまうことがあります。これが、冬の室内が特に乾燥する大きな理由なのです。


4. 知っておきたい空気の乾燥がもたらす影響

冬の空気の乾燥は、単に「喉が渇くな」「肌がカサつくな」といった不快感だけでなく、私たちの健康や安全にさまざまな影響を及ぼします。具体的にどのようなリスクがあるのか、正しく理解して対策につなげましょう。


4.1 肌や喉のトラブル

空気が乾燥すると、私たちの体から水分が奪われやすくなり、特に皮膚や粘膜にトラブルが起こりやすくなります。

肌は、表面の角質層が水分を保つことでバリア機能の役割を果たしています。しかし、空気が乾燥すると皮膚の水分が蒸発し、このバリア機能が低下してしまいます。その結果、かゆみ、カサつき、粉ふき、あかぎれといった肌荒れを引き起こしやすくなるのです。

また、喉や鼻の粘膜も乾燥の影響を大きく受けます。粘膜が乾くと、ウイルスや細菌などの異物を体外に排出する「線毛」の働きが鈍くなります。これにより、喉のイガイガや痛み、咳といった症状が出やすくなるだけでなく、感染症のリスクも高まります。


4.2 ウイルスが活発になりやすい環境

冬にインフルエンザなどの感染症が流行しやすいのは、低温であることに加え、空気の乾燥が大きく関係しています。

空気が乾燥していると、咳やくしゃみで飛んだ飛沫の水分がすぐに蒸発し、ウイルスが軽くなります。これにより、ウイルスが長時間空気中を漂いやすくなり、感染が広がるリスクが高まるのです。さらに、前述のとおり喉や鼻の粘膜が乾燥して防御機能が低下するため、ウイルスが体内に侵入しやすくなり、感染症にかかりやすい状態になってしまいます。


湿度とウイルスの生存率の関係(目安)

湿度

ウイルスの活動

高い(50%~60%)

ウイルスの活動が低下し、生存率が下がる

低い(40%以下)

ウイルスが長時間空気中を浮遊し、生存率が上がる


4.3 静電気や火災のリスク

空気の乾燥は、不快な静電気や火災のリスクも高めます。

通常、電気は空気中の水分を通じて少しずつ放電されます。しかし、空気が乾燥していると水蒸気が少ないため、体にたまった電気が逃げにくくなります。その結果、体に静電気がたまりやすくなり、ドアノブなどの金属に触れた際に「バチッ」と一気に放電するのです。

この静電気の火花が、ガソリンスタンドなど引火性の高い場所で発生すると、火災や爆発につながる危険性があります。また、空気自体が乾燥していると、木材や紙、カーテンなども乾いて燃えやすくなります。そのため、一度火が発生すると燃え広がりやすい危険性も高まるため、火の取り扱いには一層の注意が必要です。


5. まとめ

冬の乾燥は、気温が低く空気中の水分量が少ないことと、大陸からの乾いた風が原因です。特に太平洋側では山を越えた「からっ風」で乾燥が進みます。暖房を使う室内は相対湿度が下がりやすいため、肌や喉のケア、火災予防などの対策が重要です。

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