人は「見たもの」ではなく「思い込んだもの」を見ている認知機能の意外な落とし穴
- sinsirokeibi
- 1月13日
- 読了時間: 4分

「確かに見たはずだった」「気づかなかったわけじゃない」事故やヒヤリ・ハットのあと、こうした言葉が出てくることは少なくありません。
私たちは普段、自分の目で見て、正しく判断していると思いがちです。しかし実際には、人は見たものをそのまま見ているわけではないことが分かっています。人は、「見たもの」ではなく、思い込んだものを見ている。ここに、認知機能の大きな落とし穴があります。
認知機能とは何か
認知機能とは、・注意する・記憶する・理解する・判断する
といった、脳の情報処理能力の総称です。
重要なのは、認知機能はカメラのように現実をそのまま写す装置ではない、という点です。脳は、入ってきた情報をすべて処理しているわけではありません。過去の経験や知識、先入観をもとに、「必要そうな情報だけ」を選んで見ています。
つまり、見えていないのではなく、最初から見ていないということが起こるのです。
なぜ人は「思い込んだもの」を見るのか
人間の脳は、省エネを好みます。毎回ゼロから状況を分析していては、疲れてしまうからです。
そのため脳は、「たぶんこうだろう」「いつもと同じだ」という仮説を先に立て、それに合う情報だけを拾います。
この仕組み自体は、日常生活ではとても便利です。しかし、危険が潜む仕事では、この仕組みが逆にリスクになります。
警備業と認知機能の関係
警備業、とくに交通誘導警備は、認知機能のかたまりのような仕事です。
・車両の動き・歩行者の視線・周囲の音・相手がこちらの指示を理解しているか
これらを同時に処理し、瞬時に判断しています。
ところが、「この時間帯は車が少ない」「ここはいつも大丈夫」「さっきも問題なかった」
こうした思い込みが入った瞬間、脳は“確認したつもり”になり、本当に見るべきものを見なくなります。
警備員の平均年齢と認知機能
警備業界では、警備員の平均年齢は50代後半と言われています。60代、70代でも現役で活躍している方は珍しくありません。
ここで誤解してはいけないのは、「年齢が高い=危ない」という話ではない、ということです。
経験があるからこそ、・危険を早く察知できる・流れを予測できる
という強みもあります。
一方で、経験が豊富だからこそ、「分かっているつもり」「見なくても想像できる」という認知の省略が起きやすくなるのも事実です。
これは能力の問題ではなく、脳の働き方の問題です。
事故は「技術」ではなく「認知」で起きる
事故が起きると、「誘導灯の振り方が悪かった」「声が小さかった」といった技術面が原因にされがちです。
しかし多くの場合、本当の原因はその前段階、何を見て、何を見落としたかにあります。
・相手が止まると思い込んでいた・こちらを見ていると思い込んでいた・危険は起きないと思い込んでいた
この「思い込み」が、判断を一瞬遅らせます。
認知機能は衰えるだけではない
認知機能は、年齢とともに必ず低下するものではありません。使っている機能は維持され、意識すれば向上もします。
逆に、「考えずにやっている」「流れ作業になっている」状態が続くと、認知機能は働かなくなります。
これは若い警備員でも同じです。
認知機能のために、警備員ができること
1. 「いつも通り」を疑う
「今日も同じ現場」ほど危険です。あえて「今日は何が違うか」を探す癖をつけるだけで、認知は活性化します。
2. 動作の前に一拍置く
誘導灯を振る前に、「本当に見えているか」を自分に問いかける。この一拍が、思い込みを外します。
3. ヒヤリ・ハットを“思考停止”で終わらせない
「何も起きなかった」で終わらせず、「なぜヒヤッとしたか」を言葉にすることが重要です。
4. 見ているつもりを疑う
視線を向けただけで、確認した気にならない。相手の反応まで見て、初めて「確認」です。
まとめ
――警備は「目」ではなく「脳」でやる仕事
人は、見たものを見ているのではありません。思い込んだものを見ています。
だからこそ、警備の安全は体力や技術だけでなく、認知機能をどう使っているかで決まります。
「慣れてきた」と感じたときほど、一度立ち止まり、本当に見ているか、考えているかを確認する。
それが、事故を防ぎ、長く現場に立ち続けるための、最も現実的な安全対策なのかもしれません。



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