【明日使えるムダ知識】「モンティ・ホール問題」―多くの数学者が首をかしげた確率の罠
- sinsirokeibi
- 1月24日
- 読了時間: 4分
多くの数学者が首をかしげた確率の罠
――モンティ・ホール問題は、なぜ人を惑わせるのか

まずは、問題をそのまま提示するところから始めましょう。
モンティ・ホール問題【出題】
あなたの前に、3つのドアがあります。1つのドアの向こうには「当たり(高級車)」、残り2つのドアの向こうには「ハズレ(ヤギ)」があります。
あなたはまず、3つのうち1つのドアを選びました。ここで司会者が登場します。司会者は、中身をすべて知っており、あなたが選ばなかった2つのドアのうち、必ずヤギが入っているドアを1つ開けます。
さて、ドアは2つ残りました。司会者はあなたにこう聞きます。
「最初に選んだドアのままにしますか?それとも、もう一方のドアに変更しますか?」
ここで質問です。ドアを変更した方が当たる確率は上がるでしょうか?それとも、変えなくても確率は同じでしょうか?
多くの人は、ここでこう考えます。「ドアは2つ。どちらも確率は1/2。変えても意味はない」
直感的には、非常に自然な考え方です。
この問題が世に出たときの“大騒動”
この問題が広く知られるようになったのは、1990年のアメリカです。当時、人気コラムニストであり、非常に高いIQで知られていたマリリン・ヴォス・サヴァントが、新聞「Parade」誌の人生相談コーナーでこの問題を取り上げました。
彼女の回答は、こうでした。
「ドアは変更した方がよい。当たる確率は2倍になる」
これが、大きな波紋を呼びます。
編集部には、数千通もの反論の手紙が届きました。その中には、
大学教授
数学者
統計学の専門家
と名乗る人々からの、強い否定の声も含まれていました。
「これは初歩的な確率論の誤りだ」「あなたは読者を混乱させている」「子どもでも分かる間違いだ」
こうした手紙が、実際に多数寄せられたことは記録として残っています。一部の手紙は、後に書籍などで原文のまま紹介されてもいます。
重要なのは、これは都市伝説ではなく、実際に起きた出来事だという点です。
なぜ“専門家”ですら間違えたのか
この問題の厄介さは、計算そのものではなく、人間の直感に真っ向から反する点にあります。
人は、「2つ残ったのだから、確率は半分ずつ」と無意識に考えてしまいます。
しかしこの直感は、司会者が“意図的にヤギを開けた”という条件を見落としています。この条件を無視すると、ほぼすべての人が間違えます。実際、当時の反論の多くも、この点を考慮していませんでした。
正解の発表
では、正解をはっきり言いましょう。
ドアは変更した方がよい。当たる確率は、変更すると2/3。変更しない場合は1/3のままです。
確率は同じではありません。変更することで、当たる確率は明確に上がります。
なぜ変更すると得をするのか【解説】
最初にドアを選んだ時点で、あなたが当たりを引いている確率は1/3です。つまり、2/3の確率で、あなたは最初からハズレを選んでいることになります。
ここが重要なポイントです。
司会者は、あなたが選ばなかったドアの中から、必ずヤギのドアを知っていて開けています。偶然ではありません。
つまり、
あなたが最初に当たりを選んでいた場合(1/3) → 変更すると外れる
あなたが最初にハズレを選んでいた場合(2/3) → 変更すると当たる
この構造は、司会者が何をしても変わりません。
極端な例で考えてみましょう。ドアが100個あったとします。あなたが1つ選び、司会者がヤギのドアを98個開け、最後に2つだけ残した場合。それでも「確率は1/2だ」と感じるでしょうか。
多くの人は、ここで初めて違和感に気づきます。
モンティ・ホール問題が教えてくれること
この問題は、確率の話であると同時に、人間の思考の癖を暴く問題でもあります。情報が増えたのに、なぜか判断を誤る。条件が追加されたのに、無視してしまう。
だからこそ、数学者や教授であっても直感に引きずられ、間違えました。
モンティ・ホール問題は、「賢さ」よりも「前提条件を正しく扱えるか」を問う問題なのです。
そしてそれは、日常の判断や仕事の意思決定にも、静かに当てはまっているのかもしれません。



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