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【後編】古事記が語る日本の誕生!天地創造から始まる壮大な神話の世界をわかりやすく紐解く

  • sinsirokeibi
  • 9月6日
  • 読了時間: 7分

この記事では、古事記に記された日本の誕生神話をわかりやすく解説します。


前回記事、前編に引き続き、後編をお送りします。


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4. 神生み神話 八百万の神々の誕生と悲劇

国生みを終えたイザナギとイザナミは、次にこの世界を治めるための神々を生み出す「神生み(かみうみ)」を始めます。日本列島という舞台が整い、そこに生命や自然現象、文化を司る多様な神々が登場することで、日本の神話の世界はさらに豊かになっていきます。この神生みこそが、森羅万象に神が宿るとされる「八百万の神々」の思想の原点と言えるでしょう。


4.1 暮らしを司る多種多様な神々

イザナギとイザナミは、人々の生活に深く関わる神々を次々と生み出しました。家や食べ物、航海、自然など、その領域は多岐にわたります。これにより、世界は神々の力によって満たされ、秩序づけられていきました。古事記には35柱以上の神々が記されており、その一部を以下に紹介します。

分類

代表的な神

司るもの

家宅の神

石土毘古神(いわつちびこのかみ)など

石、土、家屋、屋根

航海の神

鳥之石楠船神(とりのいわくすぶねのかみ)

船、海上交通

食物の神

大宜都比売神(おおげつひめのかみ)

穀物、食物全般

自然の神

風の神、山の神、野の神など

風、山、野原

このように、身の回りのあらゆるものに神を見出す世界観は、日本の文化や信仰の根底に今もなお息づいています。


4.2 火の神カグツチの誕生とイザナミの死

順調に進んでいた神生みでしたが、最後に悲劇が訪れます。イザナミが火の神である迦具土神(カグツチノカミ)を産んだ際、その炎によって女陰に大火傷を負ってしまいました。これが原因で、国と神々を生み出してきた母神イザナミは、病に伏し、ついには亡くなってしまいます

愛する妻を失ったイザナギの悲しみは深く、その怒りは息子のカグツチに向けられました。イザナギは腰に佩いていた十束剣(とつかのつるぎ)を抜き、カグツチを斬り殺してしまいます。この時、カグツチの血や体からもまた新たな神々が生まれ、神々の系譜はさらに続いていくことになります。イザナミの死は、この世に初めて「死」という概念をもたらし、物語は次の舞台である死者の国「黄泉の国」へと移っていくのです。



5. 死者の国 黄泉の国で起きたイザナギの試練

多くの神々を産んだイザナミでしたが、火の神カグツチを産んだ際の火傷が原因で命を落としてしまいます。愛する妻の死を嘆き悲しんだイザナギは、イザナミを取り戻すため、死者が住むという暗黒の世界「黄泉の国(よみのくに)」へと向かいました。ここから、日本の神話における生と死の起源を語る、悲しい物語が始まります。


5.1 愛する妻を追って黄泉の国へ

暗く不浄な黄泉の国を旅し、ついにイザナギはイザナミと再会を果たします。御殿の扉越しにイザナギが呼びかけると、中からイザナミのか細い声が聞こえてきました。「あなたに会いたかった。どうか私をここから連れ出してください」と願うイザナギに対し、イザナミはこう答えます。「残念ながら、私はもう黄泉の国の食べ物を口にしてしまいました。簡単には帰れません」と。

しかし、愛する夫の願いを無下にはできず、イザナミは「黄泉の神々に相談してみましょう。その間、決して私の姿を覗いてはいけません」と言い残し、御殿の奥へと消えていきました。


5.2 決して見てはならないという約束

長い時間が経ってもイザナミは戻ってきません。待ちきれなくなったイザナギは、ついに禁断の約束を破ってしまいます。自身の髪に挿していた櫛の歯を一本折り、それに火を灯して御殿の中を照らしてしまったのです。

そこでイザナギが目にしたのは、在りし日の美しい妻の姿ではありませんでした。体に蛆がわき、腐り果て、その体には八柱の雷神(八雷神)がまとわりついている、恐ろしく変わり果てたイザナミの姿でした。この世のものとは思えない光景に、イザナギは恐怖のあまり逃げ出してしまいます。


5.3 生者と死者の世界の決別

醜い姿を見られたことにイザナミは激怒し、恥をかかせた夫を捕らえるため、黄泉醜女(よもつしこめ)という醜い鬼女を追手として差し向けます。イザナギは髪飾りを投げると葡萄が、櫛を投げると筍が生え、追手がそれを食べている隙に逃げ続けました。

ついに黄泉の国と地上世界の境である黄泉比良坂(よもつひらさか)までたどり着いたイザナギは、そこに生えていた桃の実を投げつけて追手を撃退します。そして、千人もの力でなければ動かせないという巨大な岩「千引の岩(ちびきのいわ)」で坂を完全に塞ぎました。

岩を挟んで対峙した二人は、最後の言葉を交わし、夫婦の縁を切ります。これが、生者の世界と死者の世界の完全な決別となりました。

決別の言葉

イザナミ

「愛しい我が夫よ。あなたがこんなひどいことをするなら、私はあなたの国の人間を1日に1000人殺しましょう」

イザナギ

「愛しい我が妻よ。それならば私は、1日に1500の産屋を建てよう」

このやり取りによって、この世に「死」が生まれ、それを上回る「生」がもたらされるという、人間の生死の理が定められたとされています。黄泉の国から命からがら逃げ帰ったイザナギは、その身に付いた穢れを祓うため、禊を行うのでした。



6. 日本の誕生を象徴する三貴子の登場

黄泉の国から生還したイザナギは、死の世界の穢れを祓うため、川で禊(みそぎ)を行います。この神聖な儀式のクライマックスで、日本の神話における最も重要で尊い三柱の神々、「三貴子(さんきし、みはしらのうずみこ)」が誕生しました。この三柱の神々の登場こそ、日本の国の成り立ちを象徴する出来事となります。


6.1 穢れを祓う儀式 禊から生まれた神々

イザナギは、筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小戸(おど)の阿波岐原(あはぎはら)と呼ばれる地で、身につけていたものを脱ぎ捨て、水に入って体を清めました。この禊の過程で、脱ぎ捨てた衣類や、体の各所を洗い清めるたびに次々と神々が生まれていきました。

そして、物語の頂点として、イザナギが顔を洗った際に三貴子が誕生します。左目を洗った時に太陽神アマテラスオオミカミが、右目を洗った時に月神ツクヨミノミコトが、そして最後に鼻を洗った時に海原の神スサノオノミコトが生まれたのです。イザナギは最後に生まれたこの三柱の神を非常に尊い子であるとし、それぞれに重要な役割を与えました。



三貴子の誕生と役割

神名

誕生の経緯

イザナギから与えられた役割

天照大御神(アマテラスオオミカミ)

イザナギが左目を洗った時

高天原(天上の世界)の統治

月読命(ツクヨミノミコト)

イザナギが右目を洗った時

夜の食国(夜の世界)の統治

建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)

イザナギが鼻を洗った時

海原(海の世界)の統治


6.2 太陽神アマテラスオオミカミ

アマテラスオオミカミは、その名の通り太陽を司る女神であり、天上世界である高天原(たかまがはら)の支配者です。父であるイザナギから「高天原を治めなさい」と命じられ、神々の中でも最高位に位置づけられました。日本の皇室の祖先神(皇祖神)ともされ、伊勢神宮に祀られていることでも知られる、日本の神々の中でも中心的な存在です。


6.3 月神ツクヨミノミコト

ツクヨミノミコトは、アマテラスの次に生まれた神で、夜の世界を司る月の神です。イザナギからは「夜の食国(よるのおすくに)を治めなさい」と命じられました。アマテラスが昼の世界を象徴する太陽神であるのに対し、ツクヨミは夜の世界を統べる存在です。しかし、古事記においては誕生後の記述が極端に少なく、謎に包まれた神としても知られています。


6.4 海原の神スサノオノミコト

三貴子の最後に生まれたスサノオノミコトは、イザナギから「海原(うなばら)を治めなさい」と命じられた神です。しかし、スサノオはその役目を果たさず、亡き母イザナミのいる根之堅洲国(ねのかたすくに)へ行きたいと激しく泣き続けました。その乱暴な振る舞いは父イザナギの怒りを買い、追放されてしまいます。荒々しい気性と英雄的な側面を併せ持つ複雑な神格の持ち主で、この後の神話で重要な役割を担っていきます。



7. まとめ

古事記が語る日本の誕生神話は、混沌とした世界から神々が生まれ、イザナギとイザナミが国土を創る「国生み」へと続きます。そして妻の死という悲劇を乗り越えたイザナギの禊から、アマテラスら三貴子が誕生し、日本の神々の系譜と国土の原型が形作られたのです。

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