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【前編】古事記が語る日本の誕生!天地創造から始まる壮大な神話の世界をわかりやすく紐解く

  • sinsirokeibi
  • 9月5日
  • 読了時間: 7分

この記事では、古事記に記された日本の誕生神話をわかりやすく解説します。


混沌とした世界から神々が生まれ、イザナギとイザナミが日本列島を創り、アマテラスら三貴子が誕生するまでの壮大な物語の全貌がわかります。


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1. 日本の誕生神話の原点 古事記とは

日本の誕生を描く壮大な神話の世界。その物語の多くは、現存する日本最古の歴史書である「古事記」に記されています。古事記は単なる神話集ではなく、天地創造から始まり、神々の活躍、そして初代天皇に至るまでの日本の成り立ちをドラマチックに描いた一大叙事詩です。この記事で紐解いていく日本の誕生神話は、この古事記を原典としています。


1.1 日本最古の歴史書 古事記の成り立ち

古事記は、奈良時代の712年(和銅5年)に編纂されました。そのきっかけは、7世紀後半の天武天皇が、乱れつつあった神話や皇室の系譜を正し、後世に伝えようと命じたことでした。この勅命を受け、驚異的な記憶力を持つ舎人(とねり)であった稗田阿礼(ひえだのあれ)が記憶していた内容を、文官の太安万侶(おおのやすまろ)が書き記し、完成させたとされています。こうして、日本の起源を語る上で欠かせない一冊が誕生したのです。


1.2 三部構成で語られる壮大な物語

古事記は、内容によって大きく三つの巻物で構成されています。それぞれの巻が、日本の歴史を異なる時代から描いています。

主な内容

時代

上巻(かみつまき)

天地開闢、神々の誕生、国生み、アマテラスの岩戸隠れ、ヤマタノオロチ退治など、神々の世界の物語。

神代

中巻(なかつまき)

初代・神武天皇の東征から、第15代・応神天皇までの天皇の物語や伝説。

人代(前半)

下巻(しもつまき)

第16代・仁徳天皇から第33代・推古天皇までの天皇の物語や歌謡。

人代(後半)

このように、神々の時代である「神代」から、天皇が治める「人代」へと続く、日本の成り立ちを体系的に記している点が大きな特徴です。特に、この記事のテーマである「日本の誕生」は、主に上巻で語られています。


1.3 なぜ古事記は日本のルーツを知る上で重要なのか

古事記は、同じく奈良時代に成立した歴史書「日本書紀」としばしば比較されます。漢文で書かれ、対外的な国の正史として編纂された日本書紀に対し、古事記は国内向けに、日本語の語り口に近い文体で書かれました。そのため、物語性が豊かで、当時の人々の思想や価値観がより色濃く反映されています。古事記を読むことは、古代日本人が自らの国の始まりをどのように捉え、語り継いできたかを知ることであり、現代に続く日本の文化や精神性のルーツを探る上で、非常に重要な手がかりとなるのです。



2. 神話の始まり 天地開闢と神々の登場

日本の誕生を語る壮大な物語は、この世界の始まり、すなわち「天地開闢(てんちかいびゃく)」から幕を開けます。古事記の冒頭では、まだ天も地も存在せず、すべてが混沌としていた状態から、どのようにして神々が生まれ、世界が形作られていったのかが神秘的に描かれています。


2.1 混沌から始まった世界

神話によれば、はじめの世界は天と地が分かれておらず、まるで溶岩や油が混じり合ったような、形のない混沌とした状態でした。やがて、その中から軽いものは上昇して天となり、重いものは沈殿して地となりました。この天と地が初めて分かれた瞬間、神々の世界である高天原(たかまのはら)が誕生したとされています。


2.2 最初に現れた特別な神々 別天津神

高天原に最初に現れたのは、「別天津神(ことあまつかみ)」と呼ばれる五柱の特別な神々です。これらの神々は、世界の根源を司る非常に重要な存在でありながら、性別を持たず、姿を現すことなく身を隠してしまったと伝えられています。特に最初の三柱は「造化三神(ぞうかのさんしん)」と呼ばれ、万物創造の根源的な力を持つとされています。



別天津神(ことあまつかみ)

神名

読み方

特徴

天之御中主神

アメノミナカヌシノカミ

宇宙の中心を司る最高神。造化三神の一柱。

高御産巣日神

タカミムスヒノカミ

万物生成の力を司る神。造化三神の一柱。

神産巣日神

カミムスヒノカミ

万物生成の力を司る神。造化三神の一柱。

宇摩志阿斯訶備比古遅神

ウマシアシカビヒコヂノカミ

生命力や活力の神。

天之常立神

アメノトコタチノカミ

天の永久性を象徴する神。


2.3 イザナギとイザナミの誕生 神世七代

別天津神が姿を隠した後、続いて「神世七代(かみよななよ)」と呼ばれる神々が登場します。最初の二柱は性別のない独神(ひとりがみ)でしたが、その後の五代は男女一対の神として生まれました。そして、この神世七代の最後に登場するのが、日本の国土を創り出す「国生み」の主役となるイザナギノミコトとイザナミノミコトです。彼らの登場によって、神話の物語は大きく動き出します。



神世七代(かみよななよ)

世代

神名

特徴

第一代

国之常立神(クニノトコタチノカミ)

独神。国土の根源神。

第二代

豊雲野神(トヨクモノノカミ)

独神。雲や野原の神。

第三代

宇比地邇神(ウヒヂニノカミ)・須比智邇神(スヒヂニノカミ)

男女一対。泥や砂の神。

第四代

角杙神(ツノグヒノカミ)・活杙神(イクグヒノカミ)

男女一対。生命の杭を象徴する神。

第五代

意富斗能地神(オホトノヂノカミ)・大斗乃弁神(オホトノベノカミ)

男女一対。身体の完成を象徴する神。

第六代

淤母陀流神(オモダルノカミ)・阿夜訶志古泥神(アヤカシコネノカミ)

男女一対。万物が満ち足りる様を象徴する神。

第七代

伊邪那岐神(イザナギノミコト)・伊邪那美神(イザナミノミコト)

男女一対。国生み・神生みを行う神。



3. 国生み神話 日本列島はこうして誕生した

天地開闢の後、天つ神(あまつかみ)たちは、まだ固まっていなかった地上世界を完成させるため、イザナギノミコトとイザナミノミコトの二神に特別な使命を授けます。これが、イザナギとイザナミが日本の国土を形作った物語、「国生み(くにうみ)」神話の始まりです。


3.1 天の浮橋での神聖な儀式

イザナギとイザナミは、天と地をつなぐ天の浮橋(あめのうきはし)に立ち、天つ神から授かった「天沼矛(あめのぬぼこ)」という矛を手にしました。二神がその矛で、まだ形も定まらない混沌とした世界をかき混ぜると、矛の先から滴り落ちた塩が積もり、一つの島ができます。これが、国生みの舞台となる最初の島、「オノゴロ島」です。


3.2 最初の島づくりと失敗

オノゴロ島に降り立った二神は、夫婦となるための儀式を行います。しかし、その際、女神であるイザナミから先に声をかけたことが原因で、最初に生まれた子は骨のない不完全な子「ヒルコ」であり、次に生まれた「アワシマ」もまた不完全でした。二神はこの子たちを葦の舟に乗せて流し、天つ神にその理由を尋ねます。すると、神々は儀式の手順が間違っていたことを指摘しました。この失敗から、二神は正しい手順で儀式をやり直すことになります。


3.3 大八島 日本の原型が生まれる

イザナギとイザナミはオノゴロ島に戻り、今度は男神であるイザナギから先に声をかけるという正しい手順で儀式を執り行いました。すると、二神は次々と立派な島々を生み出していきます。この時生まれたのが、「大八島(おおやしま)」と呼ばれる日本列島の原型です。古事記によれば、以下の順番で島々が誕生したとされています。



大八島の誕生順序

順番

古事記での名称

現在の主な地域

1

淡道之穂之狭別島(あわじのほのさわけしま)

淡路島

2

伊予之二名島(いよのふたなしま)

四国

3

隠伎之三子島(おきのみつごしま)

隠岐諸島

4

筑紫島(つくしのしま)

九州

5

伊伎島(いきのしま)

壱岐島

6

津島(つしま)

対馬

7

佐度島(さどのしま)

佐渡島

8

大倭豊秋津島(おおやまととよあきつしま)

本州

こうして日本の国土の骨格が完成し、二神の使命は次の段階である「神生み」へと続いていくのです。


次回記事、後編に続きます

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