警備員に対する誤解

多くの人に言われます。警備員なんて、誰でも入社出来る。社会の底辺層だ。
・・・いろいろ、厳しい言葉で言われることがあります。
確かに警備員という仕事は、特別な学歴を求められません。大卒でなくてもいい。難しい資格が最初からなくてもいい。年齢制限も比較的緩やかです。
そのためでしょうか。「行くところがない人がやる仕事」「誰でもできる仕事」という印象を持つ人も少なくありません。
しかし、本当にそうでしょうか。
私は二十年以上この業界に関わり、多くの警備員と出会ってきました。そしてその結論は、世間のイメージとはかなり異なっています。
そもそも交通誘導警備は、人の生命と財産を守る仕事です。
道路工事の現場では、一つの判断ミスが重大事故につながります。
歩行者を先に通すのか。
車両を先に通すのか。
大型車をどう誘導するのか。
工事車両をどのタイミングで出すのか。
その判断は瞬間的です。
迷っている時間はありません。
しかも、周囲は常に変化しています。
天候も変わる。
交通量も変わる。
歩行者の流れも変わる。
工事内容も変わる。
昨日安全だった方法が、今日も安全とは限りません。
私は以前、交通誘導が非常に上手な人が事故を起こしかけた場面を見たことがあります。
経験豊富な人でした。
ところが、その日はいつもと違う条件が重なっていました。
本人は気付いていませんでした。
反対に、経験は浅くても慎重さを失わず、真面目に確認を続けていた隊員が危険を察知し事故を防いだこともあります。
交通誘導とは、単純作業の積み重ねではありません。
考える仕事です。
観察する仕事です。
そして責任を負う仕事です。
私はむしろ、いい加減な人には務まらない仕事だと思っています。
実際に当社へ面接に来られる方々を見てもそうです。
時間に正確な人。
約束を守る人。
素直な人。
嘘を言わない人。
そういった方々は長続きします。
反対に、自分勝手な人、連絡が取れない人、感情の起伏が激しい人は続きません。
なぜなら、警備員は一人で仕事をしているように見えて、実際にはたくさんの人との信頼関係で成り立っているからです。
現場監督さん。
作業員さん。
地域住民の皆様。
通行するドライバーの方々。
そして仲間の警備員。
多くの人から信頼されなければ仕事が成立しません。
ある隊員がいました。
入社当時は人と話すのが苦手でした。
自信もなく、面接のときも小さな声でしか話せませんでした。
ところが交通誘導を続けるうちに少しずつ変わっていきました。
毎日現場に行き、挨拶をし、報告をし、お客様と接する。
それを繰り返すうちに表情まで変わりました。
数年後には現場の中心となり、ユーザー様から直接指名されるようになったのです。
もし警備員が誰にでもできる仕事なら、このような成長は起きないでしょう。
警備業には不思議な力があります。
人を鍛えます。
人を成長させます。
もちろん、楽な仕事ではありません。
夏は暑い。
冬は寒い。
雨の日もあります。
危険もあります。
それでも続けられる人には、それだけの理由があります。
感謝されるからです。
必要とされるからです。
自分が人の役に立っていると実感できるからです。
私は長年この業界を見てきましたが、社会の底辺だと思ったことは一度もありません。
むしろ、人々の安全を陰で支え続ける重要な仕事だと思っています。
道路工事が安全にできるのも、イベントが混乱なく開催できるのも、多くの警備員が責任を持って働いているからです。
目立つ仕事ではありません。
表彰されることも少ないでしょう。
しかし、誰かがやらなければ社会は成り立ちません。
警備員に対する誤解は、実際に現場を見たことがないことから生まれるのかもしれません。
もし機会があれば、一度工事現場の交通誘導員を観察してみてください。
どれだけ周囲を見ているのか。
どれだけ気を配っているのか。
どれだけ多くの人と関わっているのか。
きっと、「ただ立っているだけ」ではないことが分かるはずです。
そして、人の安全を守ることの重みと責任を感じることでしょう。
警備員とは、社会の底辺ではありません。
社会の安全を支える縁の下の力持ちです。
少なくとも私は、そのような誇りを持ってこの仕事に携わっています。



コメント