一本のコーヒーの力──交通誘導員が感じるささやかな励まし

※この記事は、筆者が交通誘導の現場で感じてきた主観に基づく内容です。 すべての現場に当てはまるわけではありませんが、 「現場で働く一人の警備員の実感」として読んでいただければ幸いです。
交通誘導の仕事は、毎日が淡々とした繰り返しです。 事故を起こさないことが最優先であり、 「何事もなく終わること」が最も大切な成果になります。
しかし、何事もない日々が続くほど、 自分の仕事ぶりが良かったのか悪かったのか、 誰かの役に立てたのかどうか、 ふと不安になる瞬間があります。
そんなとき、 現場で差し入れとしてもらうコーヒーやスポーツドリンクが、心にしみるほど嬉しい ということがあります。
ここでは、筆者が感じてきた 「差し入れが嬉しい理由」を3つの視点から語ります。
1. 差し入れをもらうことで、相手との距離がぐっと縮まる
交通誘導の仕事は、始まってしまえば基本的に孤独です。 自分だけで立つ現場もあれば、相方と二人で立つ現場もありますが、 どちらにしてもコミュニケーションの範囲は限られています。
現場監督と話すのは最初の打ち合わせだけ。 地域の方と話すのは、通行の案内をするときだけ。 上司が来るのは、巡回のほんの数分だけ。
そのため、 「自分はこの現場で一人で立っている」 という感覚になることがあります。
そんなとき、 現場監督や地域の方がふらっと近づいてきて、 「暑いからこれ飲んで」 「寒いだろう、温かいの買ってきたよ」 と差し入れを渡してくれる。
その瞬間、 胸の奥がじんわり温かくなるのです。
差し入れは、ただの飲み物ではありません。 “あなたの存在を見ていますよ”というメッセージでもあります。
警備員は、現場の端に立っているだけのように見えます。 しかし、差し入れをもらうことで、 「この現場の一員なんだ」 「一緒に仕事をしている仲間なんだ」 という感覚が芽生えます。
■ 仲間意識が生まれる瞬間
差し入れをもらうと、 相手との距離が一気に縮まります。
現場監督からの差し入れ →「この人は自分を気にかけてくれているんだ」
上司からの差し入れ →「見守ってくれているんだ」
地域の方からの差し入れ →「この地域の安全を守っているんだ」
どれも、警備員にとっては大きな励ましです。
特に、 人がほとんど来ない現場や ミスをして怒られた直後の現場では、 孤独感や孤立感が強くなります。
そんなときに差し入れをもらうと、 「さぁ、また頑張ろう」 という気持ちが自然と湧いてきます。
差し入れは、 現場で生まれる小さな“仲間意識”の象徴なのです。
2. 自分を認めてもらえたような気持ちになる
交通誘導の仕事は、 「何事もなく終わること」が最も大切です。
しかし、何事もないということは、 裏を返せば「成果が見えにくい」ということでもあります。
危険を未然に防いだ
歩行者を安全に誘導した
車の流れをスムーズにした
こうした仕事は、 うまくいけばいくほど“何も起きない”ため、 誰からも評価されません。
そのため、 「今日の自分の仕事は良かったのだろうか」 「役に立てたのだろうか」 と不安になることがあります。
そんなとき、 現場の人から差し入れをもらうと、 自分の仕事ぶりを認めてもらえたような気持ちになるのです。
■ 差し入れは“無言の評価”
差し入れを渡す人は、 「あなたの仕事が素晴らしいです」 とは言いません。
しかし、 差し入れという行動そのものが、 「あなたの働きを見ていますよ」 という無言の評価になります。
警備員は、 褒められることが少ない仕事です。
だからこそ、 差し入れの一本が、 次の頑張りのエネルギーになります。
3. 夏場のスポーツドリンク、冬場のホットコーヒーは本当に体にしみる
交通誘導の現場は、季節によって過酷さがまったく違います。
■ 夏場のスポーツドリンク
炎天下のアスファルトは、体感温度が40度を超えることもあります。 汗は止まらず、体力はどんどん奪われていきます。
そんな中で差し入れとしてもらうスポーツドリンクは、 ただの飲み物ではありません。
体にしみる
頭がスッとする
体力が戻る
気持ちが軽くなる
涼しい部屋で飲むスポーツドリンクとは、 まったく別物の味がします。
「この一本で、あと2時間は頑張れる」 そんな気持ちになるのです。
■ 冬場のホットコーヒー
冬の現場は、手足の感覚がなくなるほど冷えます。 風が強い日は、体温がどんどん奪われていきます。
そんなとき、 差し入れとしてもらうホットコーヒーは、 まるで救いのように感じます。
手が温まる
体の芯がほぐれる
気持ちが落ち着く
もう少し頑張ろうと思える
暖かい部屋で飲むコーヒーとは違い、 現場で飲むホットコーヒーは、 心まで温めてくれる力があります。
まとめ──差し入れは“飲み物以上の意味”を持っている
交通誘導の現場で差し入れをもらうことは、 単なる飲み物を受け取ることではありません。
仲間意識が生まれる
自分が認められたような気持ちになる
過酷な現場で体と心が救われる
差し入れは、 警備員にとって小さな励ましのような存在です。
その一本が、 「また頑張ろう」という気持ちを生み、 現場の安全を守る力につながります。
差し入れをくれる人は、 そのことを意識していないかもしれません。 しかし、警備員にとっては、 その優しさが確かに力になっています。



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