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きゅうりの馬はなぜ?お盆の豆知識|ご先祖様を迎える準備と知っておきたい作法

  • sinsirokeibi
  • 2025年8月11日
  • 読了時間: 10分

お盆に飾るきゅうりの馬はご先祖様に早く来てほしいという願いの表れです。この記事では、そんな精霊馬の意味から迎え火・送り火の作法、新盆の準備、宗派による違いまで、ご先祖様を丁寧にお迎えするための豆知識とマナーを解説します。


1. お盆とはどんな行事?ご先祖様をお迎えする大切な期間

お盆とは、年に一度、ご先祖様の霊を自宅にお迎えし、感謝を伝えて供養するための大切な仏教行事です。多くの地域では夏に行われ、家族や親戚が集まり、ご先祖様と共に静かな時間を過ごす日本の伝統的な風習として根付いています。

単なる夏の連休ではなく、亡くなった大切な人が「あの世」と呼ばれる世界から帰ってくる、と考えられている特別な期間なのです。


1.1 お盆の正式名称と由来

お盆は、正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といいます。これは、古代インドのサンスクリット語「ウラバンナ」を漢字に音写した言葉で、「逆さ吊りの苦しみから救う」という意味があります。

その由来は、お釈迦様の弟子である目連尊者(もくれんそんじゃ)の物語にあります。神通力で亡き母が地獄で逆さ吊りにされて苦しんでいる姿を見た目連尊者が、お釈迦様の教えに従って多くの僧侶をもてなし供養したところ、その功徳によって母を救うことができた、という話です。この逸話から、ご先祖様への供養が、巡り巡って自分たちにも良い影響を与えるという考え方が生まれ、現在のお盆の行事へとつながっていきました。


1.2 お盆の期間はいつ?地域による違い

「お盆」と一言でいっても、その期間は地域によって異なります。これは、明治時代に行われた改暦(旧暦から新暦への変更)が影響しており、主に3つの時期に分かれています。

名称

期間

主な地域

新盆(しんぼん・にいぼん)


または7月盆

7月13日~16日

東京都、神奈川県・静岡県・石川県の一部など

月遅れ盆


または8月盆

8月13日~16日

全国的に最も多い一般的なお盆の時期。多くの企業でお盆休みが設定されるのもこの期間です。

旧盆(きゅうぼん)

旧暦の7月13日~16日


(新暦では毎年日付が変わる)

沖縄県や鹿児島県の奄美地方など

ご自身の地域や、帰省先の地域がどのお盆の時期にあたるのか、事前に確認しておくと良いでしょう。


2. お盆の豆知識 きゅうりの馬となすの牛に込められた意味

お盆の時期になると、きゅうりやなすに割り箸などで足をつけた、動物のようなお供え物を見かけることがあります。これは「精霊馬(しょうりょううま)」と呼ばれ、ご先祖様の霊がこの世とあの世を行き来するための大切な乗り物です。きゅうりで作る「馬」と、なすで作る「牛」には、それぞれ家族の温かい願いが込められています。


2.1 きゅうりの馬は早く来てほしいという願い

きゅうりは、足の速い「馬」に見立てられています。これは、お盆に帰ってくるご先祖様に、少しでも早く家に到着してほしいという、お迎えする家族の気持ちを表したものです。馬に乗って、一刻も早く会いに来てくださいね、という願いが込められています。


2.2 なすの牛はゆっくり帰ってほしいという願い

一方、なすは歩みの遅い「牛」に見立てられています。これには、お盆の終わりにご先祖様が帰る際に、できるだけ長くこの世に滞在し、ゆっくりとあの世へ戻ってほしいという、名残惜しい気持ちが表現されています。また、牛はたくさんの荷物を運べることから、お供え物をたくさん積んで帰ってもらいたい、という願いも込められていると言われています。


きゅうりの馬

なすの牛

役割

お迎え(行き)の乗り物

お見送り(帰り)の乗り物

込められた願い

早く帰ってきてほしい

ゆっくり帰ってほしい・お土産をたくさん持って帰ってほしい


3. ご先祖様を迎えるお盆の準備リスト

お盆にご先祖様を気持ちよくお迎えするためには、事前の準備が欠かせません。地域によって差はありますが、お盆の準備は、盆入りの前日である12日までには済ませておくのが一般的です。慌てないように、余裕を持って準備を始めましょう。ここでは、お盆に必要な準備をリスト形式でご紹介します。


3.1 精霊棚(盆棚)の準備とお供え物

お盆の期間中、ご先祖様の霊が滞在される場所となる「精霊棚(しょうりょうだな)」または「盆棚(ぼんだな)」を設けます。仏壇の前や横、あるいは座敷などに小机を置き、真菰(まこも)で編んだござを敷いて作るのが伝統的です。仏壇を精霊棚として兼用する場合もあります。

精霊棚には、以下のようなものをお供えしてご先祖様をお迎えします。

品目

意味・役割

位牌

仏壇から精霊棚の中央に移し、ご先祖様の依り代とします。

真菰(まこも)のござ

お釈迦様が真菰の寝床で病人を癒したという言い伝えから、聖なる敷物とされています。

精霊馬・精霊牛

きゅうりで作った馬となすで作った牛です。ご先祖様が早く来られるように、そしてゆっくり帰られるようにという願いが込められています。

盆提灯

ご先祖様の霊が迷わずに家に帰ってくるための目印となる灯りです。

水の子

洗ったお米となすやきゅうりをさいの目に刻んだものを、蓮の葉などに乗せたお供え物。餓えや渇きを癒す意味があります。

おがら

皮を剥いだ麻の茎。迎え火や送り火を焚く際に使います。結界としての意味も持ちます。

ほおずき

提灯のような形から、ご先祖様を導く灯りの役割を果たすとされています。

そうめん

ご先祖様が帰る際の荷物をまとめる綱に見立てたり、幸せが長く続くように願ったりする意味があります。

これらに加えて、仏様への基本のお供え物も準備します。これらのお供え物は「五供(ごくう)」と呼ばれ、仏様への感謝と敬意を表す基本とされています。

お供え(五供)

具体例

お線香を焚きます。香りは心身を清め、仏様の食事になるとも言われます。

お盆の花(盆花)として、キク、リンドウ、ミソハギなどを飾ります。棘のある花や香りの強い花は避けるのが一般的です。

灯明(とうみょう)

ロウソクの灯りです。世の中を照らす仏様の智慧を象徴します。

浄水

きれいな水やお茶をお供えします。ご先祖様の喉の渇きを潤す意味があります。

飲食(おんじき)

炊きたてのご飯や、季節の果物(スイカ、メロンなど)、故人が好きだったお菓子や料理などをお供えします。


4. お盆期間中の過ごし方と作法

お盆はご先祖様が家に帰ってこられる特別な期間です。準備を整えたら、心静かにご先祖様と過ごしましょう。ここでは、お盆期間中の代表的な作法である「迎え火・送り火」と、過ごす上での注意点について解説します。


4.1 迎え火と送り火のやり方と意味

迎え火と送り火は、ご先祖様の霊を家にお迎えし、そして再びお見送りするための大切な儀式です。それぞれの意味と基本的なやり方を理解しておきましょう。

儀式

意味

時期(一般的)

迎え火

ご先祖様の霊が迷わずに家に帰ってこられるための目印の火

8月13日の夕方(盆の入り)

送り火

お盆を共に過ごしたご先祖様の霊を、再びあの世へとお見送りするための火

8月16日の夕方(盆明け)

具体的なやり方は、素焼きのお皿「焙烙(ほうろく)」の上で、麻の茎である「おがら」を燃やすのが伝統的です。玄関先や門口で火を焚き、その煙に乗ってご先祖様が行き来されるといわれています。マンションなど火を焚くのが難しい場合は、盆提灯を灯すことが迎え火・送り火の代わりとなります。近年では、火を使わない電池式の提灯も広く使われています。


4.2 お盆にしてはいけないことってあるの?

お盆には「してはいけない」とされることがいくつか伝わっています。これらは厳格な決まりというよりは、ご先祖様への配慮や、仏教の教えに基づく習わしです。なぜそう言われるのか背景を理解し、心穏やかに過ごすための心構えとして捉えるとよいでしょう。

  • 殺生を伴うこと


    仏教では生き物の命を奪う「殺生」を禁じているため、お盆期間中の釣りや狩猟、虫取りなどは避けるべきとされています。

  • 水辺に近づくこと


    昔から、水辺はあの世とこの世の境目であり、ご先祖様以外の霊も集まりやすい場所と考えられてきました。そのため、水難事故への戒めや、悪い霊に連れていかれないようにという思いから、海や川で泳ぐのは避けた方がよいという言い伝えがあります。

  • お祝い事


    お盆はご先祖様を供養する仏事の期間であるため、結婚式や入籍、新築祝いといった慶事は別の時期に行うのが一般的です。

  • 針仕事


    裁縫などの針仕事は、うっかりあの世から来た霊を針で刺してしまうという迷信から、控えた方がよいと言われることがあります。

これらはあくまで古くからの言い伝えです。ご先祖様を敬う気持ちを大切に、静かに過ごすことを心がけましょう。


5. まだある!知っておきたいお盆の豆知識Q&A

お盆の基本的な準備以外にも、地域や宗派によって異なる風習や、よくある疑問があります。ここでは、知っておくとより深くお盆を理解できる豆知識をQ&A形式でご紹介します。


5.1 新盆(初盆)は特に丁寧に供養する

故人が亡くなって四十九日の忌明け後に、初めて迎えるお盆のことを「新盆(にいぼん・あらぼん)」または「初盆(はつぼん)」と呼びます。初めて地上に帰ってくる故人の霊が道に迷うことがないように、という願いを込めて、通常のお盆よりも特に丁寧に供養を行うのが一般的です。

新盆では、親族や故人と親しかった方々を招いて法要を営んだり、僧侶にお経をあげてもらったりします。また、玄関や軒先には目印として清浄無垢な白木で作られた特別な提灯「白紋天(しろもんてん)」を飾るのが特徴です。この提灯は、新盆の年だけ使われる特別なものとなります。


5.2 浄土真宗にお盆の特別な準備は不要?宗派による違い

お盆の風習は、仏教の宗派によって考え方や作法が異なります。特に、他の宗派と大きく違うのが浄土真宗です。

浄土真宗では、亡くなった方は阿弥陀如来の力によってすぐに極楽浄土へ往生し、仏になる(往生即成仏)と考えられています。そのため、ご先祖様の霊がお盆の時期に家に帰ってくるという考え方がなく、精霊馬や精霊棚、迎え火・送り火といったお盆特有の準備は基本的に行いません。

ただし、お盆を故人を偲び、仏様の教えに改めて感謝する大切な期間と捉え、家族でお墓参りをしたり、お寺の法要に参加して法話を聞いたりします。



宗派によるお盆の考え方の違い(一例)

宗派

お盆の考え方

特徴的な準備や過ごし方

浄土真宗

亡くなった方はすぐに極楽浄土へ往生しているため、霊として帰ってはこない。

精霊棚や迎え火・送り火は行わない。故人を偲び、仏法に触れる期間とする。

その他の多くの宗派


(真言宗、天台宗、曹洞宗など)

ご先祖様の霊がこの世(自宅)に帰ってくる期間。

精霊棚を飾り、精霊馬を用意する。迎え火で霊を迎え、送り火で見送る。


5.3 盆踊りは何のために踊るの?

夏の風物詩である盆踊りですが、その起源は単なるお祭りではありません。もともとは、お盆に帰ってきたご先祖様の霊を慰め、再びあの世へ送り出すための宗教的な行事でした。

そのルーツは、平安時代に空也上人が始めた「念仏踊り」にあるとされています。念仏を唱えながら踊ることで、仏様への信仰を深め、霊を供養したのです。この念仏踊りが、お盆に帰ってきた霊をもてなし、送り出すための踊りとして全国に広まり、現在の盆踊りの形になったといわれています。今では地域住民の交流の場としての意味合いも強いですが、本来はご先祖様への供養の気持ちが込められた大切な行事なのです。


5.4 ほおずきを飾る理由とは

お盆の時期になると、お花屋さんやスーパーで「ほおずき」を見かけることが多くなります。ほおずきをお盆に飾るのには、主に2つの理由があります。

一つは、ご先祖様が帰ってくる際の目印となる「提灯」の役割です。ほおずきの鮮やかなオレンジ色とふっくらとした形が、夜道を照らす提灯に見えることから、霊が迷わずに家にたどり着けるようにという願いを込めて飾られます。漢字で「鬼灯」と書くのも、この提灯の役割に由来するといわれています。

もう一つの理由は、その内部が空洞になっていることから、ご先祖様の霊が宿る場所(御霊屋・みたまや)になると考えられているためです。ご先祖様は、このほおずきを依り代として、お盆の期間を過ごされるとされています。


6. まとめ

お盆はご先祖様の霊をお迎えし供養する大切な期間です。きゅうりの馬には早く来てほしい、なすの牛にはゆっくり帰ってほしいという願いが込められています。迎え火や送り火などの作法を理解し、心を込めてご先祖様と過ごしましょう。

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