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【図解】津波の高さごとの状況が一目でわかる!1m・3m・5m…被害の違いと避難の目安

  • sinsirokeibi
  • 1 日前
  • 読了時間: 12分
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津波の高さ1m、3m、5mごとの被害状況を、図解で分かりやすく解説します。発表される数値の意味、警報の種類、そして命を守るための避難の目安がこの記事で分かります。津波はわずかな高さでも極めて危険で、迅速な避難が最も重要です。


1. 津波の高さを知る前に 発表される数値の定義とは

テレビやラジオ、インターネットで発表される津波の高さ。その数値が具体的に何を指しているかご存じでしょうか。実は、発表される「津波の高さ」は、私たちがいる陸上を駆け上がる津波の高さそのものではありません。この違いを知らないと、「発表が1mだから、海抜3mのここにいれば安全」といった誤った判断につながる恐れがあり、非常に危険です。安全な避難行動のためにも、まずは発表される数値の正しい定義を理解しましょう。


1.1 「津波の高さ」と「遡上高(そじょうこう)」の違い

津波に関する高さには、大きく分けて気象庁が発表する「津波の高さ」と、実際の被害状況を示す「遡上高」の2種類があります。この2つは意味が全く異なります。

種類

定義

特徴

津波の高さ(発表値)

津波がない状態の潮位(平常潮位)から、津波によって海面がどれだけ高くなったかという数値。

沿岸の検潮所などで観測される、あくまで「海面の上昇分」です。

遡上高(そじょうこう)

津波が陸地に到達し、駆け上がった最も高い地点と、平常潮位との高さの差。

地形の影響を強く受け、発表される「津波の高さ」の2倍から4倍以上になることもあります。


1.2 なぜ発表される高さより実際の津波は高くなるのか?

津波は、陸地に近づき水深が浅くなるにつれて、エネルギーが集中し波が高くなります。さらに、陸上に到達すると、その勢いのまま坂道を駆け上がります。特に、リアス海岸のようなV字型の湾の奥など、地形が複雑な場所では津波のエネルギーが集中しやすく、局所的に非常に高くなる傾向があります。

過去の津波災害では、気象庁の発表した「津波の高さ」が3m程度であっても、場所によっては遡上高が10mを超えた例も少なくありません。発表される津波の高さを過小評価せず、「実際の津波はもっと高くなる可能性がある」という意識を持つことが、命を守るための第一歩です。


2. 【図解】津波の高さごとの状況と想定される被害

津波は、その高さによって被害の様相が大きく異なります。ここでは、気象庁が発表する津波の高さを基準に、どのような状況や被害が想定されるのかを具体的に解説します。ご自身のいる場所のリスクを正しく理解し、迅速な避難行動につなげましょう。


2.1 津波の高さ0.2m〜1mの状況(津波注意報レベル)

津波の高さが1m以下であっても、決して油断はできません。「ひざ下程度の高さ」と聞くと危険性が低いように感じるかもしれませんが、津波の持つ力は海水浴の波とは全く異なります。

対象

想定される状況・被害

人間

健康な大人でも歩行が困難になる。足を取られて転倒する危険性。

建物・車

床下浸水が発生する可能性がある。小型の船舶は転覆するおそれ。


2.1.1 人間への影響

津波の高さがわずか30cmでも、流れが速い場合は健康な大人でも立っているのが困難になります。50cmになると、流れの力によって子どもや高齢者はもちろん、大人でも転倒し、流される危険性が非常に高まります。海や川の近くにいる場合は、直ちにその場を離れてください。


2.1.2 建物や車への影響

沿岸部の低い土地では、床下浸水が発生する可能性があります。また、養殖いかだは流失し、港に係留している小型の船舶は転覆したり、流されたりするおそれがあります。この高さの津波でも車が動かされることがあり、浸水した道路での車の運転は極めて危険です。


2.2 津波の高さ1m〜3mの状況(津波警報レベル)

津波の高さが1mを超えると、被害は急激に甚大化します。このレベルの津波が到達する沿岸部では、命に危険が及ぶ事態が想定されます。

対象

想定される状況・被害

人間

立っていることは不可能。流された場合、死亡率が極めて高くなる。

建物・車

木造家屋の全壊・流失。車は簡単に流される。


2.2.1 人間への影響

浸水深が1mを超えると、津波に巻き込まれた場合の死亡率はほぼ100%になるとされています。人は立っていることができず、瓦礫などとともにあっという間に流されてしまいます。迅速に高台や津波避難ビルへ避難することが不可欠です。


2.2.2 建物や車への影響

津波の高さが2mに達すると、木造家屋は全壊・流失する威力を持ちます。車も簡単に流され、他の建物への衝突や、避難経路を塞ぐ障害物となる可能性があります。沿岸部の道路や橋が破壊されることも想定されます。


2.3 津波の高さ3m〜5mの状況(津波警報・大津波警報レベル)

予想される津波の高さが3mを超えると「大津波警報」が発表されます。これは「巨大な津波」が襲来するおそれがあることを意味し、木造家屋が密集する地域では壊滅的な被害が想定されます。

対象

想定される状況・被害

人間

2階建て家屋の1階天井まで浸水。避難が遅れれば生存は極めて困難。

建物・車

木造家屋はほぼすべて流失。鉄筋コンクリートの建物も低層階は破壊される危険。


2.3.1 人間への影響

津波の高さが3mを超えると、一般的な2階建て家屋の1階部分は完全に水没します。避難が遅れ、屋内に留まった場合の生存は極めて困難です。このレベルの津波が予想される地域では、ためらうことなく、指定された緊急避難場所へ直ちに避難する必要があります。


2.3.2 建物や車への影響

木造家屋は基礎ごと流失し、街区全体が壊滅的な被害を受ける可能性があります。鉄骨造の建物でも変形・倒壊するおそれがあり、鉄筋コンクリート造の比較的頑丈な建物であっても、1階や2階部分は破壊される危険性があります。


2.4 津波の高さ5m以上の状況(大津波警報レベル)

東日本大震災で観測されたような、高さ5mを超える巨大な津波は、広範囲に壊滅的な被害をもたらします。頑丈な建物の高層階や、相当な高さの高台へ避難する以外に助かる術はありません。

対象

想定される状況・被害

人間

広範囲で甚大な人的被害が発生。津波避難タワーやビルの3〜4階以上への避難が必須。

建物・車

鉄筋コンクリートの建物でも流失・倒壊のおそれ。地形そのものが変わる可能性。


2.4.1 人間への影響

津波の高さが5mを超えると、2階建て家屋は屋根まで完全に水没します。10mに達すると、津波避難ビル等の3階や4階に相当する高さまで浸水するため、より高い場所への避難が求められます。この状況では、個人の力での対処は不可能です。


2.4.2 建物や車への影響

鉄筋コンクリート造の頑丈なビルでさえ、低層階から中層階が破壊されたり、流失・倒壊したりする危険性があります。橋や堤防といった巨大なインフラも破壊され、街全体が機能を失い、地形そのものが変わってしまうほどの甚大な被害が想定されます。


3. 津波の高さと連動する警報・注意報の種類

気象庁が発表する津波に関する警報・注意報は、予想される津波の高さによって3つの種類に分けられています。それぞれの警報が意味する危険度と、発表された際に取るべき行動を正しく理解しておくことが、命を守る上で非常に重要です。

以下の表は、津波警報・注意報の種類と、それぞれに対応する津波の高さ、取るべき行動の目安をまとめたものです。

種類

予想される津波の高さ

発表される津波の高さの区分

取るべき行動の目安

大津波警報

3mを超える(5m, 10m, 10m超)

巨大

命を守るため、ただちに可能な限り高い場所へ避難してください。

津波警報

1mを超え、3m以下

高い

沿岸部や川沿いから離れ、高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。

津波注意報

0.2m以上、1m以下

(表記なし)

海の中にいる人はただちに海から上がり、海岸から離れてください。


3.1 大津波警報 予想される津波の高さが3mを超える場合

大津波警報は、予想される津波の高さが3mを超える場合に発表される、最も危険度が高い警報です。気象庁は、より危険性が伝わるよう「巨大」という言葉を用いて発表します。東日本大震災クラスの巨大な津波が想定され、木造家屋の全壊・流失や、人の死亡率が急激に高まるなど、甚大な被害が予想されます。この警報が発表された場合は、ためらうことなく、即時に避難を開始してください。


3.2 津波警報 予想される津波の高さが1mを超え3m以下の場合

津波警報は、予想される津波の高さが1mを超え、3m以下の場合に発表されます。この場合、気象庁は「高い」という言葉で危険を伝えます。この高さの津波でも、木造家屋が全壊・半壊する可能性があり、沿岸部や河川の近くにいる場合は命に危険が及びます。警報を見聞きしたら、速やかに安全な高台や津波避難ビルなどへ避難する必要があります。


3.3 津波注意報 予想される津波の高さが0.2m以上1m以下の場合

津波注意報は、予想される津波の高さが0.2m以上1m以下の場合に発表されます。「注意報」という言葉から危険性が低いと誤解されがちですが、津波の高さが50cmでも人は立っていることができず、車の運転も困難になり流されてしまう危険があります。海の中にいる人はただちに海から上がり、釣りや海水浴を中止して海岸線には絶対に近づかないでください。


4. 津波の高さに応じた適切な避難行動の目安

津波警報や注意報が発表されたとき、命を守るためには迅速かつ適切な避難行動が不可欠です。ここでは、津波の脅威から身を守るための基本的な避難の考え方と、具体的な行動の目安を解説します。


4.1 原則は「より高く、より遠くへ」

津波避難の鉄則は「より高く、より遠くへ」です。これは、海岸や川の近くから離れ、できるだけ標高の高い安全な場所へ避難することを意味します。近くに高台がない場合は、鉄筋コンクリート造りの頑丈な建物(津波避難ビル)の上階や、津波避難タワーを目指してください。発表される警報・注意報の種類に応じて、取るべき行動は異なります。


津波警報・注意報レベルごとの避難行動目安

警報・注意報の種類

避難行動の目安

大津波警報

沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や津波避難ビルなど安全な場所へ避難してください。対象地域では、あらゆる手段を用いて、最大級の警戒態勢で避難する必要があります。

津波警報

沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や津波避D難ビルなど安全な場所へ避難してください。想定される高さを超える津波が襲来する可能性もあるため、油断は禁物です。

津波注意報

海の中にいる人はただちに海から上がり、海岸から離れてください。海水浴や釣りは非常に危険です。海岸に近づかないようにしましょう。

ハザードマップなどを活用し、自宅や職場、学校など、日頃から利用する場所の近くにある避難場所を事前に確認しておくことが、いざという時の迅速な行動につながります。


4.2 車での避難が危険な理由

「車を使えば早く遠くへ逃げられる」と考えがちですが、津波避難における車の使用は原則として危険です。その理由は複数あります。

第一に、多くの人が一斉に車で避難しようとすると、大規模な交通渋滞が発生します。渋滞に巻き込まれると、かえって逃げ遅れる原因となり、消防車や救急車といった緊急車両の通行を妨げることにもなりかねません。

第二に、津波が道路に到達すると、たとえ数十cmの浸水でも車は動けなくなります。エンジンが停止し、水圧でドアが開かなくなり車内に閉じ込められる危険性があります。パワーウィンドウも作動しなくなる可能性があり、脱出が困難になります。

さらに、津波の力は凄まじく、車は簡単に流されてしまいます。流された車は、人や建物を破壊する凶器となり、被害を拡大させる要因にもなります。これらの理由から、津波からの避難は「徒歩」が原則です。ただし、高齢者や体の不自由な方など、やむを得ない場合は除きますが、その場合も渋滞や浸水のリスクを十分に認識しておく必要があります。


5. 津波の状況に関するよくある質問

津波に関して、多くの人が抱く疑問や誤解について解説します。正しい知識が、いざという時の適切な判断と行動につながります。


5.1 津波は第1波が一番高いとは限らない?

はい、その通りです。津波は繰り返し何度も押し寄せ、第2波、第3波の方が高くなることや、最大になるまでに数時間以上かかることもあります。東日本大震災でも、後から来た波の方が高かった地域が多く報告されています。

一度津波が引いたからといって、決して安心はできません。津波警報や注意報が解除されるまでは、絶対に海岸や川の近くに近づかず、安全な避難場所にとどまり続けてください。


5.2 津波の速さはどのくらい?

津波の速さは水深によって変化し、水深が深いほど速くなります。沖合ではジェット機に匹敵する時速800km以上に達することもあります。

陸地に近づき水深が浅くなると速度は落ちますが、それでも陸上を駆け上がる津波の速さは、人間が走るよりも速い時速36km(100mを10秒で走る速さ)に達します。津波を見てから逃げ始めるのでは、まず間に合いません。揺れを感じたら、または警報を聞いたら、すぐに避難を開始することが重要です。


5.3 津波と高潮の違いは何?

津波と高潮は、どちらも海水が陸地に押し寄せる現象ですが、発生のメカニズムが全く異なります。その違いを正しく理解しておくことが大切です。


津波

高潮

発生原因

海底で起こる地震や火山噴火、地すべりなど

台風や発達した低気圧による気圧の低下と強風

波の性質

波長が非常に長く、海の水の塊全体が押し寄せる

強風で海水が吹き寄せられ、海面全体が盛り上がる

到達時間

地震発生後、数分から数時間で到達する

台風や低気圧の接近に伴い、数時間かけてゆっくりと海面が上昇する

津波は破壊力が非常に大きいエネルギーの塊であり、高潮とは危険性の質が異なります。


5.4 津波の前に必ず「引き波」は起こる?

いいえ、必ずしも引き波から始まるとは限りません。地震を引き起こす断層の動き方によっては、最初に海面が急激に盛り上がる「押し波」が到達する場合もあります

「引き波がないから津波は来ない」と自己判断するのは非常に危険です。強い揺れを感じたり、津波警報が発表されたりした場合は、海面の様子に関わらず、直ちに高台へ避難してください。


6. まとめ

津波は高さ1mでも致命的な被害をもたらし、第1波が最大とは限りません。気象庁の警報・注意報を見聞きしたら、高さを過小評価せず「より高く、より遠くへ」の原則で即時避難を開始し、警報解除まで安全な場所に留まってください。

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