3月の警備員――忙しさと、春のはじまりのあいだで
- sinsirokeibi
- 3月2日
- 読了時間: 3分

警備員にとって、3月は特別な月だ。
世間では「年度末」という言葉が飛び交うが、それは私たちの現場にもはっきりとした形で現れる。
とにかく、忙しい。
年度末工事ラッシュ
3月になると、不思議なほど工事が増える。
道路工事、設備工事、補修作業、掘削作業――。まるで示し合わせたかのように、あちこちで工事が始まる。
おそらくは予算の都合なのだろう。年度内に施工を終える必要があるため、多くの業者が駆け込みのように動き出す。
特に忙しいのが、3月上旬から中旬にかけて。
朝から夕方まで現場が途切れない
別現場の応援依頼が入る
気がつけば一週間が一瞬で過ぎている
警備員にとって、この時期はまさに繁忙期だ。
無事に一日を終えて帰宅すると、「今日もよく立ったな」と実感する日が続く。
ラッシュのあとに訪れる静けさ
しかし、その忙しさは永遠には続かない。
中旬を過ぎる頃、ふっと波が引くように工事が減り始める。
年度末ラッシュがひと段落し、現場には少しだけ余白が生まれる。
どこか閑散期のような空気。
「今年度も終わるんだな」
そんな感覚が、現場にも漂い始める。
もっとも――
次のラッシュが4月から始まることを、警備員はみんな知っているのだけれど。
3月の道路に増えるもの
この時期、もう一つよく目にするものがある。
初心者マーク。
3月中旬以降、急に増える。
ハンドルを握る姿がどこかぎこちない運転手。慎重に右左折を繰り返す車。中には、高校を卒業したばかりのように見える若いドライバーもいる。
免許取得シーズンなのだ。
初々しい運転を見ると、少し微笑ましい気持ちになる。けれど同時に、警備員としては緊張感が走る。
「分かりやすさ」がいつも以上に求められる
運転に慣れた人なら、多少曖昧な合図でも意図を汲み取ってくれる。
しかし初心者ドライバーは違う。
合図の意味を瞬時に判断できない
周囲を見る余裕が少ない
想定外の動きをする可能性がある
だからこそ、この季節の誘導は少し変わる。
いつもより大きく。いつもよりゆっくり。そして、いつもより丁寧に。
「誰が見ても分かる合図」を意識する。
警備員の仕事は交通を止めることでも流すことでもない。迷わせないことだと、改めて感じる季節でもある。
警備員に訪れる“ボーナスシーズン”
そして3月には、もう一つの楽しみがある。
それは――気候だ。
警備員は一年中、外に立つ。
真夏の照りつけるアスファルト。冬の指先がかじかむ冷たい風。
それらを乗り越えた先に待っているのが、3月の空気だ。
寒すぎず、暑すぎない。日差しは柔らかく、風はどこか優しい。
田舎の現場では、ふと顔を上げると――
咲き始めた桜
少し色づいた山
春を知らせる鳥の声
そんな景色に出会うこともある。
警備員にとって3月は、まるで一年頑張ったご褒美のような季節なのかもしれない。
新しい季節の入り口で
忙しさと、静けさ。緊張感と、穏やかさ。
3月の現場には、その両方が同時に存在している。
初心者マークの車が通り過ぎるたび、新しい生活が始まる人たちの姿を感じる。
そして警備員もまた、新年度へ向けて気持ちを整えていく。
春は、道路の上にもやってくる。
今日も旗を持ちながら、少しだけ背筋を伸ばす。
新しい一年が、もう始まりかけている。



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