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なぜラジオ体操第2はあんなに難しいのか?──懐かしいけれど奥が深い、日本の朝の文化

  • sinsirokeibi
  • 10月18日
  • 読了時間: 4分
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■ 「第2って、なんか忙しくない?」

小学生の夏休み、眠い目をこすりながら公園に集まっていたあの頃。「ラジオ体操のカード」にハンコをもらうのが目的で、体操は半分寝ながらやっていた人も多いはず。

でも、大人になって改めてやってみると──「第1」はスムーズに体が動くのに、「第2」になると急にバタバタ。リズムは速いし、手足が絡まるし、動きの切り替えが多い。

「えっ、なんでこんなに難しいの!?」そう感じたことがある人、きっと少なくないでしょう。

実はこの「第2が難しい」のには、ちゃんとした理由があるのです。


■ まずは豆知識:「第1」と「第2」は、目的が違う!

意外と知られていませんが、ラジオ体操第1と第2は、対象者と目的がまったく違うんです。

  • 第1体操:子ども・高齢者・一般向け。誰でも安全にできる。

  • 第2体操:現役世代・労働者向け。筋肉をしっかり使う。

つまり第2は、もともと“働く大人のための運動”として設計されたんです。

第1は「準備体操」的な位置づけで、全身をほぐすのが目的。一方で第2は、筋力・瞬発力・柔軟性の強化を狙った構成になっており、動きが素早く・広く・複雑になっているのです。


■ 難しく感じる3つの理由

では具体的に、なぜ第2は難しく感じるのでしょうか?大きく分けて、3つの理由があります。

① リズムが速く、テンポが変化する

第1が「ゆったり」なのに対して、第2は全体的にテンポが速い。特に中盤の「体をねじる運動」「両足跳びの運動」などは、音楽のリズムが急に変わるので、体がついていけず“置いてけぼり”になりがちです。

音楽自体も、テンポ120前後の第1に対して、第2は約136とやや速い。さらに、動作の切り替えが多く、脳でリズムを取り直す瞬間が何度も訪れるため、「難しい」と感じやすいのです。

② 使う筋肉が多く、動きが立体的

第2は、体の前後・左右・ねじりをすべて網羅。第1が主に“正面方向”の動きに対し、第2は三次元的な運動を求められます。

たとえば、「腕を振って体をねじる運動」では肩甲骨から腰までの連動が必要。「ジャンプの運動」では太ももとふくらはぎを交互に使います。

つまり、第2をきちんと行うと、全身の筋トレに近い効果があるのです。だから、正しい姿勢でやると意外なほど疲れる。

「難しい=本気で体を動かす体操」と言えるわけです。

③ 「型の記憶」が少ない

第1体操は学校や地域で何度も経験しているため、体が自然に覚えています。しかし第2は、やる機会が少ない。

実際、NHKラジオで毎朝放送されるのも第1が中心で、第2を放送するのは週に1~2回程度。慣れていない分、「どう動くんだっけ?」と迷いやすくなるのです。

つまり、第2は“難しい体操”というより、“やる頻度が少ない体操”。使わないと、どんどん忘れてしまうのです。


■ 実は理にかなっている「第2体操の構成」

ラジオ体操第2は、戦後まもなくの1943年に制定されました。当時の目的は「労働者の健康維持・疲労回復」。工場勤務や重労働が多い時代に、全身の筋肉を効率よく動かすプログラムとして考案されたのです。

特徴的なのは、そのバランス。

  • 上半身(腕・肩・胸・背中)

  • 下半身(太もも・ふくらはぎ)

  • 体幹(腹・背筋・腰)

これらを約3分でまんべんなく刺激する構成になっています。特に「体を反らす」「前後に倒す」動きは、日常生活で使いにくい筋肉を伸ばす狙いがあります。

つまり、「難しさ=本格的さ」。ラジオ体操第2は、見た目以上に完成度の高い総合運動プログラムなのです。


■ 大人になってわかる「第2の気持ちよさ」

久しぶりに真面目に第2をやってみると、終わったあとにスッと汗が出て、体が軽くなる感覚を味わえます。

あの独特の動きは、筋肉にしっかり“スイッチ”を入れる構造になっているから。肩こり、腰の重さ、血流の悪さなど、現代人の悩みをやわらげる効果もあると言われています。

実際、企業や自治体の中には、第2体操を「職場体操」として導入しているところもあります。工事現場や警備業など、体を使う仕事の現場では、**第2こそ本番前の“起動スイッチ”**として重宝されているのです。


■ 「難しい=奥が深い」それが第2の魅力

私たちはつい「簡単=良いこと」と考えがちですが、ラジオ体操第2の“ややこしさ”は、むしろ魅力です。

覚えるまでが少し大変でも、体が慣れてくると、第1では味わえない「スッキリ感」や「全身が動いた充実感」が訪れます。

つまり、第2は“体操の上級編”であり、子どもの頃にはわからなかった「大人の健康体操」なのです。


■ おわりに──「第2」は体にも頭にも効く、最高の朝活

ラジオ体操第2は、単なる体操ではありません。全身をほぐし、筋肉を動かし、脳をリズムに合わせて活性化する“究極の3分運動”。

あのちょっと忙しい動きには、「さあ、今日も頭と体をフル回転させよう」というメッセージが隠されています。

難しいからこそ、やってみる価値がある。むしろ“大人の再挑戦”にぴったりの体操なのです。

朝の3分、ちょっとだけ真剣に第2をやってみてください。最初はバタバタでも、終わったあとの爽快感に、きっと笑ってしまうはずです。

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