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「警備員」――世間のイメージと実際~見えているのは一部だけ。本当の交通誘導の世界とは?~

  • sinsirokeibi
  • 10月21日
  • 読了時間: 4分
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■ 「立ってるだけでしょ?」──そんな言葉を耳にするけれど

「警備員さんって、ずっと立ってるだけで楽そう」──こんな言葉を、一度は聞いたことがあるかもしれません。

確かに、工事現場や駐車場で赤い誘導棒を振っている姿を見ると、単純な仕事のように見えるかもしれません。

でも、実際に現場で働く人たちの声を聞くと、「立っている」どころか、“立ちながら常に考えている”のが警備員という職業です。

歩行者、自転車、車、工事車両──。どれか1つの動きを誤ると、事故につながる。一瞬の判断で人の命を守る仕事、それが交通誘導警備なのです。


■ 「交通誘導警備員」は日本中に必要な存在

全国の警備員は、約58万人(2024年時点)。そのうち半数以上が交通誘導を中心とした「第2号警備業務」に従事しています。

つまり、日本の道路や街づくりを支えているのは、表に出ない“青い制服のプロたち”です。

ビル建設、道路工事、イベント会場、駐車場、学校の改修工事…。彼らがいなければ、トラックが安全に出入りできず、歩行者の安全も守れません。

特に都市部では、工事よりも「交通整理」こそが現場の要といっても過言ではありません。


■ イメージと違う「技術職」としての側面

警備員というと「誰でもできる仕事」という印象を持つ人もいます。しかし、実際には国家資格「交通誘導警備業務2級・1級」が存在し、法律(警備業法)に基づいた教育・訓練が義務づけられています。

新人は入社時に20時間以上の法定教育を受け、信号機のない交差点や、夜間・雨天などの想定訓練も行います。

ベテラン警備員になると、現場の特性に応じて“流れを読む力”が身につく。車のスピードやドライバーの癖、歩行者の動き、工事の進行具合を一瞬で判断する。まさに“人の目と感覚でしかできない安全管理”を担っているのです。

これは、AIや機械が代わりにやるにはまだ難しい領域。人間の判断力と責任感が問われる、現場の最前線の仕事です。


■ 炎天下、雨、雪──「立つだけ」の過酷さ

夏は炎天下で体温が上がり、冬は風にさらされる。それでも警備員は、長時間立ち続けなければなりません。

しかも“ただ立っている”のではなく、車の動きや歩行者の安全を常に監視し、工事の進行や無線の連絡も気にかけています。

集中力を途切れさせないために、自分なりの「立ち方」や「呼吸法」を工夫している人も多いとか。

現場では、熱中症防止のために定期的に水分を取り、仲間同士で声を掛け合うなどの“チームワーク”も欠かせません。

警備員の制服が汗に濡れているのは、「立ってるだけ」じゃなく、人の命を守るために動き続けている証拠なのです。


■ 「ありがとう」の一言で救われる

交通誘導警備員は、普段あまり注目されません。でも、たまに通行人から「ご苦労さま」「ありがとう」と声をかけられると、その日一日の疲れがふっと軽くなるそうです。

特に、子どもからの「こんにちは!」や、現場を通るドライバーのちょっとした会釈。それだけで「この仕事をやっててよかった」と感じるといいます。

警備員にとって一番うれしい言葉は、「何も起こらなかったね」。事故がなければ、それが最高の成果なのです。

派手なニュースにはならないけれど、“何も起こさないこと”を成し遂げるプロフェッショナル。それが交通誘導警備員です。


■ 「人の安全を預かる」誇り

警備員という仕事には、社会的な偏見が少なからずあります。「誰にでもできる仕事」「高齢者のセーフティネット」──。

確かに、年齢や経歴を問わず働ける職業であることは強みです。しかし、その背景には「経験と判断の積み重ね」があります。

高齢の警備員ほど、車の動きを読む“カン”が鋭い。若手が気づかない危険を一瞬で察知し、先に動ける。経験が命を守る現場では、年齢=信頼の証なのです。

そして何より、彼らがいるからこそ、工事現場の作業員も、歩行者も、安心して通れる。社会全体の“安全の裏側”を静かに支えているのが警備員という職業です。


■ 「警備員=人の安全をデザインする仕事」

交通誘導の現場は、毎日が違います。天気も交通量も、人の流れも変わる。同じ現場など、ひとつもありません。

そのたびに、最適な誘導位置やタイミングを瞬時に考える。実はこれは、“安全をデザインする仕事”なのです。

建築や運転のように“形”には残りませんが、「安全」という見えない成果を日々作り出しているのが、交通誘導警備員たちです。


■ おわりに──見えないところで、今日も誰かが守っている

朝、道路が混雑していても、誰かが赤い棒を振っている。夜、暗い現場でライトが点滅している。それは、誰かの仕事であり、誰かの使命です。

警備員は、事故を防ぐために「見えないところで見ている人」。その存在があるからこそ、社会は安全に動いています。

次に信号待ちのとき、現場で立っている警備員を見かけたら、ほんの少しだけ思い出してみてください。

「この人が、今日も誰かの安全を守っているんだな」と。

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